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Symmetry

サイト関連、その他いろいろ。古いのハズイので見ないで 20100923~

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風のおはなし



 さわらさんがやっと書いてくれましたね!
 いや責めてるわけじゃないんですよ、相方を紹介できるなあと喜んでいるだけで。

 やっぱり一人でやるよりも、二人のほうが何かといいです。
 一人でやっていた時代があるからこそそう言えますが、まぁ人それぞれでしょう。
 無理矢理引き込んじゃった形なので悪いとは思っています。ごめんねさわらさん。

 嬉しいついでに初ネタ。
 尊敬する伊坂幸太郎著の重力ピエロからの派生。
 これからもこんな見るに堪えない駄作を投下していきます。
 そのうちサイトにも載せるかも。名前変換はナマエで。

 

 

 

 すべてが宙に浮いてしまえばいい。

 重力なんてなくなって、地には何も触れられず、すべてが宙に浮けばいい。

 彼女は半ば本気で、そう思った。

 沈んだ気持ちも、俯く重さに耐える首も、熱く頬を滑る涙も、すべてが痛かった。苦しかった。

 伸ばしてもだらしなく下がるだけの腕も、アスファルトの地面に張り付いたような足も、浮いてしまえばいい。

 

 ぱたりと雫が落ちた。二つ目が落ちようとしたところで、それは斜め下へと軌道を変え、小さな葉の上に落ちた。

 風の仕業である。彼女の感情から生み出されたものを、冷たいアスファルトに叩きつけるのは心が痛い。それでも、逆らえない。落ちる運命には抗えない。

 

 重力を笑った。

「無力者を。弱者を、痛めつけるだけの脳しかないのでしょう、お前は」

 

 

 痛いほど笑った。横隔膜が悲鳴を上げる。

「痛むことを知らないのは誰だ、お前だけだろう!」

 涙が零れる。笑いが止まらないからだ。そうに違いない。

 

 

「お嬢さん、何を泣いているのかな」

 知っていた。笑われて、泣いているのが本当は誰であるか。

「君が泣くと、僕も、――流せない涙でさえ、零したくなる」

 

「…ごめ、ん」重力に逆らえないで、座り込んだ。「どうしてだろう。あたしには、重力がね、あたしだけ、」

 

「君は、せかいの欠片…例えば僕を、感じることができる」

 

「うん」

 

「けれどそれは辛いことだよ」

 

「うん」

――知っている。

 認識の外にあるものを視る。それは実は、特別な事などではない。

 その瞬間に、世界を捨てる。それさえできれば。

 それを考えるなど、尋常ではない。ましてや理解できる者があるなど。

「現実逃避の境地。そこまで君を追い詰めたのは、せかい。……すなわち、僕であり、君であり、この重力だ」

 

「自覚、したから。あたしは重力に逆らえず、無理矢理此処に立たされているって」

 

「だから辛くなった」

 風は笑った。「ナマエ、僕を感じて。――重力なんて、消える。存在を意識しないで」今までどおりに。

 

 

 せかいの欠片。

 消えることのない風は、彼女に認識されたことをいたく喜んだ。

 存在を認められたのは、初めてではない。

 だからこそ、その喜びを、ずっと持っていたいと思えたのだ。

 

 

「君が声を聴こうとする時、僕はいつだって傍にいるよ。君をどれだけ想っても、僕からは呼べないんだ。君の意識が、僕らの絆だ」

 

 

 風は何でも知っていた。だからこそ、せかいの痛みを引き受け、それを果てに流すのだ。

 それを知ろうとした彼女は、世界で一番の幸せ者であり、そして不幸者だった。


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