さわらさんがやっと書いてくれましたね!
いや責めてるわけじゃないんですよ、相方を紹介できるなあと喜んでいるだけで。
やっぱり一人でやるよりも、二人のほうが何かといいです。
一人でやっていた時代があるからこそそう言えますが、まぁ人それぞれでしょう。
無理矢理引き込んじゃった形なので悪いとは思っています。ごめんねさわらさん。
嬉しいついでに初小ネタ。
尊敬する伊坂幸太郎著の重力ピエロからの派生。
これからもこんな見るに堪えない駄作を投下していきます。
そのうちサイトにも載せるかも。名前変換はナマエで。
すべてが宙に浮いてしまえばいい。 重力なんてなくなって、地には何も触れられず、すべてが宙に浮けばいい。 彼女は半ば本気で、そう思った。 沈んだ気持ちも、俯く重さに耐える首も、熱く頬を滑る涙も、すべてが痛かった。苦しかった。 伸ばしてもだらしなく下がるだけの腕も、アスファルトの地面に張り付いたような足も、浮いてしまえばいい。 ぱたりと雫が落ちた。二つ目が落ちようとしたところで、それは斜め下へと軌道を変え、小さな葉の上に落ちた。 風の仕業である。彼女の感情から生み出されたものを、冷たいアスファルトに叩きつけるのは心が痛い。それでも、逆らえない。落ちる運命には抗えない。 重力を笑った。 「無力者を。弱者を、痛めつけるだけの脳しかないのでしょう、お前は」 痛いほど笑った。横隔膜が悲鳴を上げる。 「痛むことを知らないのは誰だ、お前だけだろう!」 涙が零れる。笑いが止まらないからだ。そうに違いない。 「お嬢さん、何を泣いているのかな」 知っていた。笑われて、泣いているのが本当は誰であるか。 「君が泣くと、僕も、――流せない涙でさえ、零したくなる」 「…ごめ、ん」重力に逆らえないで、座り込んだ。「どうしてだろう。あたしには、重力がね、あたしだけ、」 「君は、せかいの欠片…例えば僕を、感じることができる」 「うん」 「けれどそれは辛いことだよ」 「うん」 ――知っている。 認識の外にあるものを視る。それは実は、特別な事などではない。 その瞬間に、世界を捨てる。それさえできれば。 それを考えるなど、尋常ではない。ましてや理解できる者があるなど。 「現実逃避の境地。そこまで君を追い詰めたのは、せかい。……すなわち、僕であり、君であり、この重力だ」 「自覚、したから。あたしは重力に逆らえず、無理矢理此処に立たされているって」 「だから辛くなった」 風は笑った。「ナマエ、僕を感じて。――重力なんて、消える。存在を意識しないで」今までどおりに。 せかいの欠片。 消えることのない風は、彼女に認識されたことをいたく喜んだ。 存在を認められたのは、初めてではない。 だからこそ、その喜びを、ずっと持っていたいと思えたのだ。 「君が声を聴こうとする時、僕はいつだって傍にいるよ。君をどれだけ想っても、僕からは呼べないんだ。君の意識が、僕らの絆だ」 風は何でも知っていた。だからこそ、せかいの痛みを引き受け、それを果てに流すのだ。 それを知ろうとした彼女は、世界で一番の幸せ者であり、そして不幸者だった。